明日の天気

コロナがなかったらな~ってifを考えながら、ウイルスに勝てないと畏怖の念をかみしめる紳士淑女の皆さん、こんにちは!

 

 

 

無事断食(以下でぇぇんじき)を終えて肉ハイを行ってきたので、今回はフィクション時々ノンフィクションの物語形式かつ口語で書きとどめておきたいと思います。

 

 

また私の行ったでぇぇんじきはかなり危険な行為なので絶対にマネしないでください。

私は二度とやりません。

 

 

 

 

キリトリ

 

 

 

朝7時。窓から入ってくる日差しで目を覚ました。

「朝」という世界に降り立った私を出迎えるのは教育チャンネルの妖精とカモノハシ。

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シャワーを浴びる。寝ぼけまなこがだんだんと開いてくる。あぁ、朝に来たのだな。私は「朝」という世界をはじめて覚えた。

 

 

 

昨日の昨日はおととい。そう、一昨日に髪の毛を切った。鏡に映る自分は正に自分とは違う何か。やはり私は異世界に来てしまったのだ。「朝」という世界で鏡に映る自分はタラちゃんになってしまったそうだ。クリームソーダ

 

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驚くほど空腹は感じていなかった。しかし「肉ハイ」を実践するには胃にクッションを置いておかなければ油が胃を貫き、食道と肛門が一本道でつながってしまう。

ので、プロテインのゼリーを流し込んだ。

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10時20分 家を出る。右ポケットに写ルンですを忍ばせた。いつまでも現像をしないままでいると写ルンですに潜む過去の記憶たちが夢に出てきて私を責めるだろう。そう思いながら私は歩みを進めた。

 

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駅前の小さい写真屋さんに入り、右ポケットから写ルンですを取り出す。そして左手に持ち替え口を開いた。

 

 

 

私は左手に写ルンですを持っています

 

 

 

私の中学英語直訳のような日本語に若い定員さんは「現像ですね」と言った。

 

 

なるほど、ハイコンテクストな日本語では中学英語直訳の狂ったような日本語でも通じるのだな。「あなたは朝ご飯に何を食べましたか??」とその店員に質問してみたかったが止めた。

 

 

 

 

西村綾香(仮名)の物語 part1

 

西村綾香は青年海外協力隊を終え帰国をしたがそのタイミングで新型コロナウイルスと鉢合わせてしまい希望どうりに就職活動を行うことができなかった。

 

このままではまずいと思った西村は自分の記憶をさかのぼり、自分は何が好きか、何が得意なのか考え、大学時代に所属していた写真サークルの記憶へとたどり着いた。

 

西村は写真サークル所属時代に、街の小さなコンクールで優秀作品とはいかずとも表彰されたことが何度かあり、写真の腕に自信があった。これだったら仕事にしてもいいかなと思い写真屋への就職を志願したのだ。そしていざ働いてみると写真屋は楽しかった。西村は自分で撮る写真も好きだったが、他人が撮った他人だけの写真に触れることで自分の空想を広げ、違う世界の自分に思いを馳せた。

 

しかし二年も写真屋を続けていると退屈になってくるもので、就職した当時の感動は薄らいでいた。いつもどうりの業務にいつもどうりの接客。次第に西村はなぜ自分が写真屋で働いているのかを考えるようになっていった。

 

いつもどうりに店の掃除を終え、店を開けて数十分後。男が入ってきた。

その男は入店すると同時に右ポケットを探りながら西村の方へと近づいてきた。

西村は右ポケットには銃が入っていると思い、身構えたがその男が出したものは写ルンですだった。西村は安堵でため息をつこうと思ったが、考えてみればよくあることで心配性の自分がばかばかしくなった。

 

 

男は右ポケットから出した写ルンですを左手に持ち替え言った。

「私は左手に写ルンですを持っています」

 

 

西村はその一言に不安を覚えた。西村の特技は写真を撮ること以外に読唇術であるが、コロナ渦では皆がマスクをしているため使うことができなく、男が本当に「私は左手に写ルンですを持っています」と言ったのか心配になった。

 

しかし、写ルンですを持ってくる客は十中八九現像をする客であるため、西村は覚えた不安を振り払うように、事務的に「現像ですね」と、そう言って見せた。

 

 

その後は事務的な手続きを行い、客に90分後に戻ってくるように伝え、90分後にあの男にまた会うことになるのかと小さく落胆していた。

 

 

 

 

計算どうり現像には時間がかかることが判明し、その間に私は「肉ハイ」をかますために某高級イタリアンへ向かった

 

 

某高級イタリアンに着き、店員に一人であることを伝え、席に着いた。

私はでぇぇんじき中に友人とその某高級イタリアンへ行ったあの日から「肉ハイ」をそこで行うことを決めていた。事前にメニューも調べ、何を注文するかまで決めていた。

 

 

しかし着席するなり注文をしてしまっては用意周到なことが店員にばれてしまう。そう思い一通りメニューを眺め、頃合いを見て呼び出しボタンを押した。

 

 

 

サラダ、ステーキ、グラス赤。パーフェクト

 

 

 

 

時間は11時6分。

 

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右手の時計はアナログなので分かりずらい。

 

 

確かな証拠を提示するために左手のデジタル時計の写真もここに用意した。

 

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私は注文している空き時間に読書をしようと思いバックからARABIC STORYsを取り出した。

 

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しかし本を読もうとしたのも束の間。渋い葡萄酒と苦いサラダが運ばれてきた。

 

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苦汁をなめるってこういうことですか。それとも私の舌が子供なんですか。そんなこと知らない。それよりサラダが多すぎる。でも食べるしかない。見ててくれよクサヴァーさん。

 

 

サラダと格闘すること約2分。ステーキが運ばれてきた。サラダの残りはあと2/3。

 

残すのか?残さないのか?う~ん。。。。たべる!!!!!

 

 

残りのサラダと格闘し完食する頃にはあの勢いよく跳ねていたステーキはだんまりとしてしまっていた。まるで憎まれ口を延々と繰り返す小学生を無視した時と同じ反応だ。

 

 

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はぁ、ちょろいな。ステーキという大そうな名前を与えられても所詮は肉の塊。今は俺の方が強い。さ~てと、「肉ハイ」始めますか。そうくだらないことを考えながら私は目を閉じ、ステーキの匂いを大きく吸い込んで「肉ハイ」を行うための儀式を始めた。

 

 

 

ここは草原。私は一人でたたずんでいる。

さわやかな風が私のほほをかすめるが、風は私を気にも留めずに行くべき方へ流れる。

遠くに見えるのは何だろう。太陽の光が眩しい草原に見える白と黒のまだら模様。ダックスフントにしては大きすぎるしパンダにしては表面の光沢が気になる。あぁウシか。

私は瞬時に理解した。あいつが今から私が食べるウシだ。

 

場面が変わって無機質な部屋に私はいた。

ヴも~~~ぅぅぅぅUUUUうううう!!!!凄まじいその断末魔はウシの悲鳴。

屠殺工場か。そう考えた刹那、ウシの息の根が止まった。

 

 

 

目を開いた私は賢者タイムの時よりも悟った顔になっていただろう。

しかしそんなことはどうでもいい。今は目の前にある「肉」をただ食べるだけだ。倫理がそれを阻むが、手と足と五臓六腑は目の前の「肉」を食べろと急かしていた。

 

 

 

「いただきます」なぜ敬語なのか。弱肉強食の頂点に立つものならばそれらしく一方的に「命、もらう!!」でいいじゃないか。今の私は無敵だ。この肉片より強い。だから言ってやるぞその言葉を!!!

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

 

 

 

 

へ?

 

 

 

 

 

私は私の意に反してその言葉の全てを言い終えていた。

 

私、今「いただきます」って言った????

 

 

 

私は食前の言葉を唱え、肉を切り、口へ運んだ。

 

 

 

お口の中が幸せ、お肉だぁいすき、脳みそじゅわぁ~~~

 

 

 

 

私の偏差値は確実に下がっていた。これ、本当に脳みその裏側がじんわりと温かくなってきて気持ちがいい。これぞ肉ハイ。

 

気が付くと目頭が熱くなっていた。葡萄酒を飲んだからなのか、肉ハイのせいなのか、それともドライアイのせいなのか。もうなんでもいいよ。感動したってことで。ウシの命含めて全部丸く収まるもん。

 

 

 

野崎徹(仮名)の物語

 

野崎の夢は彼が幼稚園児だったころから料理人になることだった。そして野崎が高校生の時に修学旅行で訪れたイタリアで、本場のイタリアンを口にし、その時からイタリアンの料理人を志すようになった。

 

しかし現実は非情なもので彼がイタリアンのシェフになることはできなかった。

料理学校を卒業した野崎は修行のためにイタリアへ単身渡航したが、全ての料理店で弟子入りを断られてしまった。そしてその断られた理由は野崎の鼻毛が出ていたためである。野崎は生まれながらにして一本だけ長い左の鼻毛を誇りに思っていた。そしてまた彼の両親も父方の祖母の意向で野崎の鼻毛を切らないでいた。

 

絶望した野崎は帰国後に職を探し、無事某イタリアンで働くことになったのだ。

 

 

野崎、某イタリアンで接客として働いて約10年。約2mの鼻毛をマスクの裏に隠し今日も元気に働きます。

 

 

この日は冬にもかかわらず温かく野崎は気合を入れて出勤した。野崎の日課は通勤時に缶コーヒーを買うことであったが、一段と気分がいい野崎はハンバーガーチェーン店でホットコーヒーのLサイズを奮発した。

 

流石に熱くてこのままでは飲めないと判断した野崎はコーヒーの蓋を取り冷ましてから飲もうと考えた。そして蓋を取り、熱いコーヒーを冷まして飲もうとした次の瞬間、鼻毛がコーヒーに入ってしまった。普段は缶コーヒーを飲んでいるため野崎の鼻毛がコーヒーに触れることはないのだがこの時ばかりは入ってしまうのは必然だった。

 

イライラしながら野崎は出勤したが、実働が始まるとコーヒーの件を忘れることができた。そしてある一人の男が野崎が働く店に訪れた。

 

野崎は来店したその男をマニュアルどうりに席へ誘導し、呼び鈴が鳴ったので注文を受け取りに行った。

 

サラダ、ステーキ、グラス赤 

その男の注文は正しくイタリアン。変にかっこつけて「ミラノ風」とか頼まないのはイタリアン。野崎感激。

 

 

その男、時計を確認する。二次元に見えるその腕時計。

その男、違う腕の時計を確認する。二次元に見えるそのデジタル時計。

 

シンプルイズベスト。野崎大感激。

 

 

野崎がサラダとワインを配膳する時、男は洋書を読んでいた。野崎は馬鹿な男だが、男が読んでいる本の文字は理解できた。

 

アラビア文字

 

野崎ハイテンション。

 

 

野崎は好奇心が湧いてきてその男のことが知りたかった。そして次の配膳の時にまた会える。そんな期待をしてその時を待った。しかし、野崎がステーキを配膳することはなかった。パートの永井さんがステーキを運んで行ってしまったためである。

 

野崎はステーキを食べるその男を遠目で眺めることにした。そして野崎は、何やら男はステーキを口に運ぶその都度に目を閉じることに気が付いた。そして目を開け目頭を熱くする。また男はソースに目もくれずそのままの味でステーキを食べていた。

 

野崎はもはや昇天5秒前の感覚だった。

 

野崎はステーキをソースなしで食べたことは一度もなかった。ので野崎の目に映るその男の姿は新鮮であり、まるでヴェネツィアのさわやかな海風のように彼の世界を包んだ。

 

この男こそイタリアン。俺が志したイタリアンはこいつだ。彼にあって自分にないもの、自分にあって彼にないもの。

 

 

鼻毛

 

 

そうだ。鼻毛を切ろう。帰ったら鼻毛を切ってイタリアンを目指そう

 

 

その後彼がどうなったかは誰も知らない。なんにせよ頑張れ野崎。

 

 

 

 

某高級イタリアンを後にした私は時間をつぶすために本屋へ向かった。

私は生活費を削ってまで本を買ってしまうという悪い癖を自覚しつつも本の匂いに包まれるべく本屋へ行った。

 

 

はい、お会計3740円でした。

 

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本屋を後にした私は現像した写真を受け取るために再度写真屋へ向かった。

私は15分前行動を心掛けているため、もちろん予定時刻の15分前に写真屋に着いた。

 

 

もちろん現像は完成していなかった。私、迷惑過ぎる。うっかり、うっかり~

 

 

終わったらお声がけしますね~、と女店員。私はフォトアルバムやらチェキやらを物色して時間をつぶした。

 

 

そして、私の名前が呼ばれた。

 

 

現像が終わっていた。ハッピー、うれぴー、ウンチブリ。

 

 

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西村綾香の物語 part2

 

 

男が店を後にした後、西村はその男の写ルンですを現像し始めた。

西村は、どうせ大した写真なんか撮っていないんだろうなと、どうせ映えを狙った写真ばっかりなんだろうなと、そう思いながら現像を始めた。

 

現像をしているうちに西村は一枚の写真に目を惹かれた。その写真はどこか異国の地を匂わせる写真だったのだ。写真の色から分かる乾いたその空気感は西村の青年海外協力隊時代の記憶に触れた。

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西村は泣いてしまった。メイクが落ちても涙が止まらなかった。そして髪の毛も抜け落ちてきた。もう西村の顔からこぼれ落ちるものは何もなかった。

 

 

そして男は予定時刻の15分前に来た。既にすべての現像は終わっていたが、西村はその写真をもう少しだけ眺めていたかったので完成出来次第声をかけると男に伝えた。

 

 

男が来店してしまったために西村は永遠がないことを悟った。写真に思い出を幽閉していても永遠はないのだと。そして西村という存在も永遠ではないと。

 

 

 

15分後。時が来てしまった。写真を手放すときが。もう事務的に働くのはやめよう。他人の写真を眺めて自分をその枠に捕らえることはもうしない。西村はそう思いながら男に写真を渡した。

 

 

 

 

写真屋を後にした私は40分後に控えている授業に万全の状態で参加するために急ぎ足で町の中心部から去った。踵を返す私の姿を見ていた人の目には、合戦から逃げる落ち武者のように映っていただろう。

 

 

明日の天気は晴れそうだ。カンパリソーダ

 

 

 

 

 

 

最後に、考えてみてほしい。昼間から酒飲みながらステーキを食べる男の姿。右手にはアナログ時計。左手にはデジタル時計。そしてどうあがいてもタラちゃん。

 

写真は無断転載しないでくだすぃー